警察歯科医会の活動について

昭和60年の日航機墜落事故を契機として歯科所見による身元確認の有用性が認められたことにより、昭和61年に警察庁刑事局長より日本歯科医師会宛に警察歯科組織についての要望書が出され、これを契機として全国に警察歯科医並びに警察歯科組織が誕生しました。

千葉県においても当初は大規模災害時を想定した警察協力歯科医でしたが、現在は千葉県警の委嘱を受けた県歯会員である歯科医師89名が県内39警察署に2~5名の千葉県警察嘱託歯科医として配置されています。

警察歯科医会の主な業務は以下の通りです。

1、警察歯科活動の実施・・・身元不明遺体の歯科所見から身元を確認する業務です。

2、警察歯科医の研修・・・研修会(実習を含む)を開催して業務精度の向上を図ります。

3、県警及び各警察署との連携、調整・・・連絡協議会の開催により業務連携を徹底します。

4、広域捜査、大規模災害時の協力体制の策定・・・県歯として警察捜査活動へ協力します。

5、関係会議、学会等への参加・・・情報交換および知見習得に努め業務内容の向上を目指します。

6、その他必要の事項・・・検死時の必要器材の整備や災害時の多職種連携と人材育成に努めます。

警察歯科医会定時総会・合同研修会などの開催

千葉県警察本部捜査第一課および県内39警察署と海上保安庁の検視担当者、東京歯科大学法歯学講座、千葉大学法医学教室、国際医療福祉大学法医学教室、千葉県歯科医師会災害対策救急医療委員会および警察歯科医が一堂に会し、毎年11月に警察歯科医会定時総会・合同研修会を開催しています。内容は、警察歯科医会の年間活動報告、大学からは検死業務に関する講義や事例報告、県警本部ならびに海上保安庁からは年次および事例報告等を行うことで検死業務レベルの向上をはかり、捜査協力等を通じて社会への貢献を目指しています。また警察歯科医への研修会や千葉県医師会警察関係医療委員会との連絡協議会ならびに年2回の千葉県警察との連絡協議会も開催しています。

身元不明者検索の実施

千葉県歯科医師会では、平成13年より身元不明者検索システムを実施しています。これは警察からの身元不明死体および行方不明者の口腔内所見についての問い合わせに対し、千葉県歯科医師会に所属している歯科医師約2,500名に資料を送付して歯科診療記録から受診歴を調査し回答を求めています

義歯へのIDコード埋入事業の促進

身元確認作業においては生前と死後の口腔内所見の比較が重要とされていますが、なかでも有床義歯装着者に対し義歯内にID番号を埋入し、その情報から受診歯科医院ならびに義歯装着者が特定できれば個人識別が容易かつ確実なものになるものと考えられます

警察歯科医会では以前よりこのことに注目し、平成17年より個人情報保護法等を考慮しながら大規模災害に備えて身元確認に有効な義歯へのIDコード埋入事業を推進しています

防災訓練への参加

警察歯科医会では毎年、南関東地域の災害を想定して地域内の都県ならびに政令指定都市を中心として実施されている九都県市合同防災訓練(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)における多数遺体取扱訓練に開催地の歯科医師会とともに参加しています。

警察歯科医会全国大会への参加

警察歯科組織が全国に誕生したことにより、全国の組織化が望まれるようになり、平成8年より各県歯科医師会が持ち回りで主催する「全国警察歯科フォーラム」が開催されていましたが、平成14年より日本歯科医師会が主催し、各都道府県歯科医師会が主管となる「警察歯科医会全国大会」として現在に至っています。

大会では講演の他に情報交換、問題提起、学術研修、事例報告等が行われ、全国の警察歯科医の研鑽の場となっています。

千葉県歯科医師会警察歯科医会は日常の警察捜査への協力のみならず、地震や事故等大規模災害発生時に多数遺体が発生した場合において、歯科的個人識別作業を行うことで社会貢献に寄与することが期待されています。

写真1 千葉県歯科医師会警察歯科医連絡協議会風景千葉県歯科医師会
警察歯科医連絡協議会風景

写真2 検死訓練(口腔内の死後歯科記録作成作業)検死訓練
(口腔内の死後歯科記録作成作業)